ドローンは、建設業や農業などさまざまな業種・業界で導入が進んでいます。とくに農業においては活躍の幅が広く、積極的な導入が急務となっているのです。そこで本記事では、農業用ドローンの概要や活用事例について深掘りして解説します。ドローン操縦に関心のある人は、ぜひ本記事の内容をご一読ください。

そもそも農業用ドローンとは？

農業分野で利用される「農業用ドローン」は、一般的に人々がイメージする撮影用ドローンとは大きく異なる特徴を持っています。多くの人がドローンと聞いて思い浮かべるのは、カメラやセンサーを搭載し、空撮やデータ収集を行うタイプです。

こうした汎用型ドローンは、映像撮影だけでなく、測量や建物・設備の点検といった幅広い業務に活用されるのが一般的です。一方で、農業用ドローンの中心的な用途は「農薬散布」であり、そのための専用構造を備えている点に特徴があります。

具体的には、農薬や肥料などの液剤を格納するタンクと、それを作物に散布するためのノズルが搭載されており、飛行しながら田畑全体に均一に薬剤を噴霧する仕組みとなっています。つまり、農業用ドローンは空撮やデータ取得を目的とした汎用的なドローンとは異なり、農作業の効率化を目的とした農業専用機として開発・利用されているのです。

このように、同じ「ドローン」という呼称であっても、その構造や用途は大きく異なります。撮影用途のドローンは軽量かつカメラ性能や飛行安定性が重視されるのに対し、農業用ドローンは液体を搭載して飛行できる強度や散布性能が求められます。

そのため、両者は見た目や仕組みの面でも大きな差があり、農業用ドローンは一般的な空撮ドローンの延長ではなく、農業の現場に特化した特殊な機材として位置付けられています。

農業用ドローンの活用事例

農業用ドローンは、近年さまざまな場面で活用が進んでおり、その代表的な事例として「農薬散布」「肥料や種子の散布」「リモートセンシング」が挙げられます。

農薬散布

まず最も一般的な活用が農薬散布です。従来は産業用無人ヘリコプターや噴霧器を使った人力での作業が主流でした。とくに大型の無人ヘリコプターは1回で広範囲をカバーできる反面、導入費用が1,000万円以上と高額で操縦技術も難しく、日本のように狭く複雑な圃場が多い地域では活用が難しい面がありました。

そのため、農薬散布を専門業者に委託することが一般的でした。これに対して農業用ドローンはコンパクトで小回りが利き、操縦も比較的容易であるため、小規模や変形地の圃場でも対応可能です。導入費用も数百万円程度に抑えられ、農家自身が自由なタイミングで散布できる点や、新規事業として散布請負サービスを始める動きが広がりつつあります。

ただし、小型であるがゆえに農薬の搭載量が限られており、バッテリー駆動による飛行時間にも制約があるため、1フライトで作業できる範囲が限られるという課題も存在します。

肥料散布・種まき

次に、肥料散布や種まき（播種）にもドローンが活用されています。これは農薬散布と同じ仕組みを利用し、液剤用タンクを固体散布用に交換することで、粒状肥料や種子を効率的に散布できます。従来人手に頼っていた作業を機械化することで、省力化と作業効率の向上に寄与しています。

リモートセンシング

さらに、リモートセンシングへの活用も注目されています。これはドローンに搭載したカメラやセンサーで圃場の温度、湿度、照度などのデータを取得し、農作物の生育状況や土壌の状態を可視化・数値化して管理に役立てる技術です。

病害虫や雑草の発生確認も可能であり、マルチスペクトルカメラなどを利用すれば、人間の目では識別できない情報をもとに高度な分析が行えます。一般的には小型から中型の汎用ドローンにセンサーを搭載して利用されており、精密農業の実現に貢献しています。

農業用ドローンを操縦するにはどうすればいい？

農業用ドローンの操縦に関しては、現時点で法的に必須となる免許制度は存在していません。しかし、農薬散布は単なる操縦作業ではなく、劇物である農薬を空中から広範囲に散布するという危険を伴う業務であり、専門的な知識と技能、安全性の確保が不可欠です。

そのため、各農業用ドローンのメーカーが独自に定める「オペレーター認定」を取得することが、機体導入や運用の前提条件とされるケースが一般的です。この認定を取得するためには、メーカーが指定する教習施設にて数日間の座学および実技講習を受講し、最終的に試験に合格する必要があります。

認定に合格するとオペレーター認定証が発行され、正規に農業用ドローンを操縦できるようになります。ただし注意点として、この技能認定は機体ごとに発行されるものであり、ある特定の機体で認定を受けても、その資格で他のメーカーや機種を操縦できるわけではありません。

つまり、使用する機体が異なれば、それぞれに応じた技能認定を取得しなければならないのが現状です。また、技能認定の取得だけではなく、法的に必須となる手続きも存在します。農業用ドローンは「無人航空機」として扱われるため、国土交通省への登録や運用許可・承認が必要です。

これには飛行させる空域や方法に関する規制が含まれており、例えば人口集中地区での飛行や目視外での運用などを行う場合には、事前に国の許可を受けなければなりません。

まとめ

農業用ドローンは、従来の撮影用ドローンとは異なり、農薬や肥料の散布、リモートセンシングなど農業に特化した機能を持つ機材です。大型無人ヘリに比べて導入コストが低く、小回りが利くため、日本の狭い圃場でも活用しやすく、農作業の効率化や省力化を大きく後押ししています。また、センサーを活用したデータ収集により精密農業の実現にもつながり、農業の高度化を支える存在となっています。操縦には法的免許は不要ですが、メーカーごとのオペレーター認定取得や国交省への登録・許可申請が必要で、安全性と正しい運用知識が不可欠です。導入が進む農業用ドローンは、これからの農業の在り方を変革する大きな力となるでしょう。

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